この記事の執筆は ”文学部”です

和歌って難しい?

「和歌は好きだけど、ちょっと難しいかな」とか、「ルールが多くて…」という若者、和歌をどうやってわかりやすく教えたらいいのかわからないと悩む国語の先生に向けて、2006年5月『和歌文学の基礎知識』(角川選書)を書き下ろしました。和歌の基本的な知識をわかりやすく、楽しく身につけていただけるように努めたつもりです。この本の第11章は「和歌と風景」です。取り上げた和歌は、4首あります。

田児たごの浦ゆうち出でて見れば真白にそ富士の高嶺に雪は降りける

(万葉集・巻三・山部赤人)

夕されば門田かどたの稲葉おとづれて葦のまろやに秋風ぞ吹く

(金葉集・秋・源経信)

志賀の浦や遠ざかり行く波間より凍りて出づる有明の月

(新古今集・冬・藤原家隆)

さ夜ふけて宿る犬の声高し村しづかなる月の遠方おちかた

(玉葉集・雑二・伏見天皇)

いかがですか?風景が浮かび上がってくるような歌ですよね。この中の「志賀の浦や」の歌を解説した箇所が、2017年度神奈川県公立高等学校入試(定通分割選抜)の国語の問題として出題されました。解説のさわりの部分を少しだけ引いてみます。

「志賀の浦」は琵琶湖の西岸のことで、京都よりも北にあるために、厳しい冬のイメージがあります。夜が更けるにつれ、波打ち際からしだいに湖水が凍ってゆき、波線がどんどん沖へと遠ざかってゆくのです。沖まで遠ざかっていった波の間から、まるで凍りついたような月が、冷たい光を放ってのぼってきます。(以下略)

冬の夜の凍てつくような寒さという、本来視覚でとらえることのできない感覚や気分を、寒いということばを全く用いないで詠んだ、新古今時代の典型的な叙景歌です。

さて、和歌といえば、近年『百人一首』が漫画、アニメ、ゲームなどにリメイクされ、人気を集めています。4月15日公開の劇場版名探偵コナンも、「から紅の恋歌」と題して、『百人一首』をテーマとした映画だそうですし、『ちはやふる』や『うた恋い。』も有名ですよね。

私も、日本語日本文学科専門科目「日本語日本文学基礎ゼミ」(1年生後期)で『百人一首』を扱うほか、2018年度前期には、プロジェクト演習「若者による文化の創造と発信」(本学CLA科目)を開講し、『百人一首』の事業化に取り組みます。鎌倉時代に生まれた『百人一首』が、若いフェリス生の感性と力で、現代の新たな文化として生まれ変わることに大いにご期待ください。

日本語日本文学科教授 谷知子

『和歌文学の基礎知識』(角川選書)
『百人一首』(角川ソフィア文庫)
『まんが百人一首』(ナツメ社)