この記事の執筆は ”文学部”です

大学院日本文学専攻修士論文発表会を開催しました

2017年2月13日(月)、大学院人文科学研究科日本文学専攻は、2016年度に提出された修士論文についての発表会を開催しました。今年度は近代文学専攻の大学院生一名から修士論文の提出があり、先輩院生、学部学生、教員ら多数の参加を得て、緊張のうちにも和やかな雰囲気に包まれて、発表と質疑応答が行われました。

発表した塚越理恵さんの修士論文のテーマは、あらゆる年代の、とくに女性を中心に多くの読者を持つ作家・梨木香歩の作品についてでした。当日はその論文の中から、初期の代表作である『西の魔女が死んだ』に題材を絞っての発表がおこなわれました。家庭や学校に違和感を持ち、不登校に陥ってしまった主人公が、現代社会の通念とはやや異なった価値観のもとで生活を営んでいる祖母の下で暮らす経験を通じ、自分のそれまでの考え方や、母、祖母を含む周囲の大人たちの生活を新たに見直すことで一つの危機を脱して、子どもから大人への階段を一歩上っていこうとするという大枠を示した上で、作品のことば一つ一つを意味づけ、その思考や行動を説き明していこうという、意欲的な発表が行われました。発表終了後は、学科で指導に携わる教員たちにより、さまざまな角度からの質問が出され、発表者はそれに対して、真摯に回答するというかたちで、やりとりが行われました。そうした中から、今回の発表や、修士論文全体の構想、方法などについての達成点と課題が、一層明確になっていくという、実りある討論となりました。

修士論文の執筆は、カリキュラム上必須のものであるばかりでなく、大学院博士前期課程2年間の研究成果を問う、院生一人一人の研究生活上、きわめて大きな意味を持ちます。博士後期課程に進学し、将来自立した研究のプロになろうとする人も、また前期課程を修了し、その知識や技能をいかして社会人としての生活に入る人も、この修士論文制作によって、在学研究期間中に、なにをどこまで明らかにすることができたのか、それを次のステージに、どう結び付け発展させていくのかといったことについて、自ら明らかにし、客観的な評価を受ける絶好の機会になります。執筆には楽しみばかりではなく、さまざまな困難も伴いがちですが、それを乗り越えて完成に結びついたときには、大きな実りをもたらしてくれます。例年多くの大学院生たちが、そうしたハードルに挑戦し、達成してきました。今年度もまたそうした実りが示されたことは、学ぶ側にとっても、指導する側にとっても大きな喜びとするところです。地道な学問的営みですが、院生、教授陣ますますの努力を積み重ねていきたいとの思いを新たにした発表会となりました。

文学部日本語日本文学科教授 島村輝