この記事の執筆は ”文学部”です

学生達が『切り絵でつくる百人一首』コラムを執筆

日本語日本文学科には、「日本語日本文学基礎ゼミ」という授業があります。1年生後期に、少人数のゼミ形式で研究の基礎を学ぶ、入門的な授業です。2017年度、私のクラスでは、『百人一首』の研究入門に加えて、『切り絵でつくる百人一首』(誠文堂新光社)のコラム記事を学生全員が執筆するという事業に取り組みました。

まず、学生16名が読者層の分析、コラム内容の検討、引用する百人一首の和歌の選定などを、グループワークを通じて行いました。その後、多くの参考文献を読みこなしたうえで、執筆作業に取り組み、コラム原稿を完成させました。文献を読むだけではなく、和菓子屋さんに直接問い合わせたり、LINEでランキング投票を行ったり、積極的に情報収集を行う姿が印象的でした。

完成したコラム内容は、「歌枕」「『百人一首』の恋愛事情」「和歌を詠むシーン」「『百人一首』の春夏秋冬」「恋のアピール」「『百人一首』ランキング」です。出来上がった原稿を読んで、私にとっても様々な発見がありました。例えば、顔も知らない段階から恋愛が始まるのは、『百人一首』の時代だけの特徴(例えば「みかの原わきて流るるいづみ川いつ見きとてか恋しかるらむ」『百人一首』27番・中納言兼輔)だと思っていましたが、現代のネット上(SNSなど)での交流とは共通点があるという記述を読んで、今も昔も変わらないことを改めて実感したり、学生の瑞々しい発想に驚かされました。2018年1月17日に予定どおり出版の運びとなり、出来上がった書籍を手に、皆で喜びを分かち合いました。

この授業は、学外にも大きな反響があり、5つの新聞社(取材日順、東京新聞・読売新聞・毎日新聞・神奈川新聞・朝日新聞)の取材を受け、紙面で大きく取り上げられました。取材の対応も学生が主体となって行い、貴重な体験をすることができました。学生達は、読者を想定しつつ執筆することが貴重な体験であったこと、多角的な視点を持つことの大切さを知ったこと、プレッシャーもあったけれどもその分書籍を手にしたときの喜びは大きかったことなどを、しっかりと語っていました。

私個人にとっても初めてのPBL(Project Based Learningプロジェクト・ベースト・ ラーニング)型授業でしたが、貴重な経験となりました。『百人一首』をはじめとする古典も、ただ過去の遺産とするのではなく、現代の生活、文化の中で再生していくことが大切だと感じています。今後も様々なかたちで『百人一首』や古典の事業化に取り組んでみたいと思っています。

日本語日本文学科教授 谷知子