Ferris Alumni Gallery#27

「フェリスらしい」コンサートを紡いで 芸術をつなぎ続けたい

長澤 彩

フェリス女学院大学演奏会室
音楽学部音楽芸術学科 2010年卒業

Category

文化表現学科/その他

2026/07/03

現在のお仕事内容を教えてください

フェリス女学院大学の演奏会室で、コンサートの企画・運営・広報を担当しています。演奏会の仕事と聞くと、公演当日の舞台進行をイメージされることが多いかもしれませんが、実際には、出演者との打ち合わせやスケジュール調整、会場運営、広報物やプログラムの制作、学生スタッフのマネジメントまで、準備段階から当日まで多岐にわたる業務があります。1つの公演には、演奏者・教員・学生・職員・来場者と、さまざまな立場の人が関わります。それぞれが持つ思いや目的をていねいに汲み取り、全体が同じ方向を向けるように整理しながら、コンサートの流れを組み立てていくことが、私の役割です。

仕事のやりがいを教えてください

最もやりがいを感じるのは、公演当日、コンサートが無事に終わり、満足そうな表情で会場を後にされるお客様の姿を見た瞬間です。 「フェリスらしかった」「フェリスで聴けてよかった」といった言葉をいただけたとき、この場所で働いている意味を強く実感します。

「フェリスらしさ」とは何か――入職以来、ずっと向き合い続けてきた問いです。私が思うフェリスらしさは、お客さまが演奏会に足を運んだときにふっと感じる「温かさ」や「ほっとする空気」、そしてプロオーケストラとは少し違う、アットホームで親しみのある雰囲気にあります。伝統と歴史に支えられた土台を大切にしながら、少しの驚きや新鮮さを添えられるよう、一つひとつの企画を丁寧に組み立てています。

コンサートづくりとは、演奏プログラムを決めるだけではなく、「空間とお客さまの体験そのものをデザインすること」だと考えています。ご来場前に手にするチラシのデザイン、会場入口でお迎えするスタッフの表情、手元のチケットに触れたときの感触――そうした一つひとつの要素がピースのように組み合わさって、コンサートという体験が立ち上がっていく。その思いを胸に、毎回の企画に向き合っています。

コンサートの開場準備の様子
打ち合わせの様子

大学時代に学んだことを教えてください

音楽学部でアートマネジメントを学び、日本のクラシック音楽の鑑賞者をどのように増やしていけるかというテーマで卒業論文に取り組みました。明確な「答え」は見つからなかったものの、その問いは今も仕事の原動力になっています。長い芸術文化の歴史の中で、自分が学び、感じたことを次の世代や社会にどう引き継いでいくか――大学での学びを通して、「芸術を一度預かり、社会へと翻訳して届ける」という視点が生まれました。今、コンサートの企画や運営に携わる中で、その感覚が自分の軸になっていると感じています。

発言や発表が常に求められる授業の中で、主体的に学びを深めていったことも印象に残っています。わからないことをそのままにしておくのが嫌で、納得できるまで先生のもとへ質問に行く学生でした。また、クラシックだけでなく多彩なジャンルの音楽に触れたことで、「これはクラシックだから」「これはポップスだから」と枠を決めつけずに考えられるようになりました。ジャンルのラベルよりも、「この曲やこの表現は、どんな人にどう届けるために生まれたのか」を起点に発想できるようになったのは、フェリスでの経験があったからだと思っています。

卒業後のキャリアについて教えてください

卒業後はフェリスで非常勤副手を務めた後に公益社団法人の芸術団体に就職し、コンサート制作の基礎を一から学びました。アーティストマネジメントから当日の舞台運営まで、伝統的なクラシック音楽イベントの制作を一通り経験したことで、コンサート企画の基本的な流れと作法を身につけることができました。

その後はフリーランスに転向し、約5年間、さまざまな現場で制作や企画の仕事に携わりました。なかでも印象に残っているのが「リトルプリンセスコンサート」です。子どもたちが会場でドレスを選んで着替え、ピアノの前で写真撮影を行い、後日、その写真を使ったオリジナル楽譜が自宅に届く――そんな体験型のコンサートを企画しました。会場、カメラマン、楽譜制作部門など、組織の内外にいる多くの関係者と連携しながら、一つの企画をつくり上げた経験は、「人を巻き込みながら企画を形にする」という、今の仕事のスタイルの原点になっています。

また、レストランからグランドピアノの活用を相談され、定期ライブイベントを設計したり、ロックミュージシャンのライブ会場でアーティストサポートを行ったり、音楽番組のテレビ収録現場に立ち会ったりと、コンサートホール以外の場で異業種の方々と仕事をする中で、「どんな場所でも音楽イベントを作れる」という自信と、場に合わせて企画を組み立てる柔軟さが身につきました。

高校生へのメッセージをお願いします

高校生の段階で、将来の職業がはっきり決まっていなくても構わないと、私は自分の経験から感じています。 私自身、高校生の頃には、今のような「コンサート全体をディレクションする仕事」があることを知りませんでした。「音楽が好き」という気持ちはあっても、それをどのような形で仕事にしていくのかは、当時はまったくイメージできていませんでした。大学で音楽を専門的に学びながら、アートマネジメントやイベント制作に触れていく中で、自分の「好き」が少しずつ具体的な仕事として形になっていきました。

今、やってみたいことや心が動くことがあるなら、その気持ちを大切にしてみてください。 大学生活の4年間で、授業や課外活動、アルバイトなどを通して、たくさんの「引き出し」をつくっておくことが、将来の選択肢を広げてくれると思います。

※所属・仕事内容は取材当時のものです。

My Career

01学生時代

アートマネジメントを専攻。少人数制のゼミで、先生や仲間と議論を重ねながら、芸術と社会をつなぐ視点を育てた。

02芸術団体・フリーランスを経て現在

公益社団法人の芸術団体でコンサート制作の基礎を習得後、フリーランスとして5年間、クラシックからレストランコンサートの企画まで幅広く経験。その後、フェリス女学院大学演奏会室に入職し、コンサートの企画・運営・広報を担う。

03今後の目標

フェリスらしいコンサートを設計し、芸術文化を次の世代へつなぎ続けること。

現在に生きる
フェリスの学び

学生時代の経験
発言や発表が常に求められる授業の中で、主体的に学びを深める。クラシックだけでなく多様なジャンルの音楽や芸術に触れた。
身についた力
一つの正解を探すのではなく、多様な価値観や表現方法を受け入れながら、自分なりの答えを組み立てる力が身についた。
仕事で活きた場面
クラシックに限らずさまざまな音楽に触れてきたことで、ジャンルを横断してアイデアを取り出せる「引き出し」が増え、特定のジャンルにとらわれない柔軟な発想でコンサートを設計できるようになりました。場や客層に応じてクラシックやポップス、映画音楽など多様なレパートリーや演出を組み合わせながら最適な企画を構築しています。固定観念にとらわれず来場者の体験を起点に考え、その場ならではの価値創出につなげています。

※所属・仕事内容は取材当時のものです。

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