現場に足を運ぶことで、環境と地域の未来を描く「学びの場」にしたい

国際社会学科 地球社会・環境専攻

佐藤 輝教授

「環境」と「地域経済」をともに育てる環境政策

「環境が守られると、地域も豊かになる」状態をどうつくるのか——その問いを、私は環境政策というフィールドから追いかけています。森や農地をただ守るのではなく、そこに暮らす人びとの生活や仕事も、無理なく続いていくことが大切だと考えています。

高校生の頃の私は、「木を植えれば地球は救える」と信じていました。けれど環境政策を学び、さまざまな現場を見るようになると、木を植えるだけでは不十分で、その木がきちんと守られ、活かされる仕組みがなければ持続的な環境保全にはつながらないという認識が国際的な潮流です。

イタリアの農村では、環境に配慮した農業へ補助金を出すヨーロッパ全域の制度や、アグリツーリズモとして農業と観光を組み合わせながら地域経済を支える国内法が進んでいます。 自分たちの畑で採れた野菜やワイン、チーズを料理として提供することで付加価値を生み出し、若い世代が地方に戻ってくる仕事もあり、農村の環境と経済の両方が支えられている現場を調査しています。

山が多く、小規模な家族経営の農家の多い日本の中山間地域は、イタリアの状況とよく似ています。 だからこそ、こうした事例から学び、「環境が守られると、地域も豊かになる」仕組みを、日本、さらには熱帯地域の農村や地域活性化にどう応用していけるのかを研究しています。

イタリアの農家民宿での生パスタやパンづくり
イタリアのヴェネト州でワイナリーの見学

グローバルな視点で日本の「当たり前」を見直し 環境問題に向き合う

私が力を入れている取り組みの一つが、アフリカ・マダガスカルでのプロジェクトです。フェアトレードのチョコレート産地を訪ねるツアーを企画したことをきっかけにして、痩せていたり成長が遅れたりしている子どもたちの姿を目の当たりにし、「フェアトレードを応援する」だけでは足りないのではないかと感じるようになりました。 「なぜ発展途上国はなかなか自立できないのか」という問いに対して、栄養の問題も深く関わっているのではないか——そう考え、焼き畑などで失われた森林を少しでも回復させながら、栄養価の高い作物を育てるチャレンジを始めています。 学生たちとともに苗木やタネを持って農村を訪ね、「環境」と「栄養」の両面からマダガスカルの人びとの生活を支える方法を模索しているところです。

学生を海外に連れていく際には、体調管理や安全面などの心配は尽きませんが、それでも「現場」にこだわるのは、訪問後の学生の成長を何度も見てきたからです。つまり、「経験」が加わることによって、世界の見え方が大きく変わります。 水道やトイレ、食べ物、交通手段など、日本では当たり前のものが当たり前ではない地域が世界には数多くあることを知ると、自分の暮らしや進路を見直すきっかけにつながっています。

日本は自然環境やインフラに恵まれた「なんとなくうまくいっている」国ですが、その安心感が、かえって課題の本質を見えにくくしている面もあると思いませんか。 環境破壊や健康被害を経験しながら政策転換を進めてきたヨーロッパ諸国や、厳しい条件の中でも暮らしを良くしようと工夫を重ねる途上国の人びとと向き合うことを通じて、日本の良さも弱点も、より立体的に浮かび上がってきます。 そうした「日本を相対化する視点」を、学生たちと一緒に育てていきたいと考えています。

マダガスカルで野菜のタネや果樹を配布

マダガスカルの学校で栄養改善について説明
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