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2024年度学位授与式 学長告辞
みなさん、ご卒業おめでとうございます。保護者の皆様、お嬢様方をここまでお支えくださり、誠にありがとうございます。
みなさんは、コロナの深刻な影響が残る2021年に大学生となられました。7月には東京都に4回目の緊急事態宣言が出され、やがてそれは全国に広がり、1年延期して開かれた東京オリンピックは観客なしでの開催となりました。アメリカでは民主党のバイデン政権が誕生し、日本では岸田政権が誕生しました。秋篠宮家の眞子さんが小室圭さんと結婚したのもこの年でした。
2022年、みなさんが、大学2年生の年には、パンデミックは漸く落ち着いてきましたが、ウクライナにロシアが侵攻するという大事件が起こりました。戦争は今も続いています。そして、円安傾向が始まったのは、この年です。
2023年、みなさんが大学3年生の時には、自民党の政治資金問題が浮上しました。それが、現在の少数与党内閣誕生へとつながっていきました。LGBTQ理解増進法が成立し、最高裁は、性別変更要件として「生殖機能を無くす手術」を求めていることを違憲としました。
2024年、みなさんが4年生の年には、年頭に能登半島の大地震が起こりました。次いで羽田空港で日本航空機と海上保安庁機が衝突する事故が発生したのは記憶に新しいところです。秋にはアメリカの大統領選挙で、トランプが当選。今年の1月に大統領になって、内外に大混乱を巻き起こしています。円安はますます進みました。海外観光客が日本に押し寄せるとともに、物価は上がり、日本人の所得水準が国際的に見て著しく低下したことが白日の元に晒されました。
一口で言うと、災害と戦争が続き、社会不安が高まる世界に強権的・独裁的リーダーが登場するという、混迷の時代が進む中に、みなさんの4年間がありました。大学の環境に一番影響があったのは、パンデミックです。キャンパス閉鎖、授業オンライン化の経験を経て、人々が偶然出会う場、人と直接触れ合う場としてのキャンパスの意味は著しく低下しました。それでも、フェリスでは、2022年度以降、授業を全面的に対面に戻し、何とか出会いの場としての大学の意味を回復しようとしてきました。ただ、一度失われたものを取り戻すのはそう簡単ではありません。また、ネットを通じての新しいコミュニケーションの形も発展してきました。現在、大学は、それらを取り入れつつ新たな出会いの場を構築すべく、模索の最中にあります。
こうして振り返れば激動の時代なのですが、それでも、みなさんは、比較的平穏な大学時代をここで過ごし、次のステップに進む準備をし、今日、学士号を取得なさいました。それは、本当に幸せなことであるとともに、みなさんの努力とお母様、お父様をはじめとする周囲の助けがあってこそのことだと思います。
去年の9月はじめ、資料収集にアメリカに行こうと、ロサンジェルス行きのデルタの飛行機に乗りました。なぜか、大学を卒業した、その年の夏に、デルタ航空の前身、ノースウェスタンに乗って、はじめて太平洋を渡った時のことが思い出されました。未知の世界に一人で飛び立ったときの不安とワクワクとした感じがよみがえってきました。
そのころ、1ドルは240円でした。普通の家の娘がアメリカ留学をするには、まず、奨学金を取らなければなりませんでした。私の大学時代の野望は、奨学金を取り、留学することでした。その扉が開いて、アメリカに飛び立った日、その先のことはまだ何も決まっていませんでした。目前に据えられた新しい世界にただ飛び込んで行きました。
みなさんは、大学時代に、私のように、何か野望あるいは願いを持っていましたか。それは叶えられたでしょうか。叶えられても、叶えられなくても、何か野望を持つということは多分大切なことなのです。まず野望を持ち、そのために行動する。それがなければ叶うということはありません。
今日、読んでいただいた聖書の箇所は、イエスの山上の垂訓の中にあります。
求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。
だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者にはひらかれる。
小さい頃、私はこの言葉について、「ちょうだい、と言えばくれるなんて、そんな都合がいいことあるはずがない」と思っていました。神社で無病息災を願うとき、それが叶うか叶わないかは全くわからない、当たるも八卦、当たらぬも八卦だと、どこか諦めの、醒めた感情が伴っていますよね。小さい頃の私は、その感覚で、この言葉を捉えていたのだと思います。
ところがある時、この言葉が言わんとしていることに突然ピンと来ました。腑に落ちました。これは、求めなければ、与えられない、探さなければ、見出せない、門を叩かなければ、開くことはない、と読むべきなのだ、と理解したのです。
これから皆さんは、より広い社会に出て行きます。今まで以上に思ったように事が進まないことが増えるかもしれません。でも、虚しいと思わず、ちょっとでも願ってください。少しでも探してください。軽くでも、門を叩いてください。その勇気があれば、目の前の門は不思議に開きます。
私自身、これまで門をたたき続けてきたようにも思います。次々に門が開いて、ここまで来ましたが、この先も門を叩き続けます。だから、今日卒業する皆さんにこの言葉を贈ります。
求めなさい。そうすれば、与えられる。探しなさい。そうすれば、見つかる。門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者にはひらかれる。
卒業、あるいは、新たな始まり、本当に、おめでとうございます。
学位授与式の様子をInstagramでも紹介しています。
https://www.instagram.com/ferrisuniv/reel/DHdx4j7zrPv/