イギリスの現代アートに関する授業で、「これが芸術なの?」と驚かされる経験をしました。これまでのアートの概念を覆される作品を見たのです。授業では、こうした「驚き」や「疑問」をそのままにするのではなく、「作者はなぜこのような表現をしたのだろう?」と考える習慣を身につけます。
卒業論文では、イギリスの画家ウォーターハウスが描いた《シャロットの姫》(1888年)をテーマにしました。この絵画の原作となった詩は、多くの画家にインスピレーションを与え、これまでにさまざまな絵画が描かれてきました。多くの画家が描いたのは、囚われの身にある姫が自身の部屋の中で生活している様子でしたが、ウォーターハウスが描いたシャロット姫の姿は、まったく異なっています。ウォーターハウスは、あえてシャロット姫の死の間際の場面を描きました。なぜ彼はその場面を描いたのか。こんな素朴な疑問が研究のきっかけでした。
ウォーターハウスの生い立ちを調べると、幼少期に母親を亡くした彼にとって、「死を目前にしてなお、毅然と振る舞う女性の姿」が彼にとって重要な意味を持っていたことがわかりました。画家の生い立ちや時代背景を調べることで、画家自身が絵画に込めた思いが浮かび上がってきます。
このように芸術作品に込められたメッセージを読み解く行為には、「謎解き」のような面白さがあります。
大学でのイギリス芸術文化の学びを活かして、目に見える物事だけを捉えるのではなく、目に見えない人の思いや背景まで洞察できるようになりたい。そう思っています。
