自分と違う生き方、境遇の人に
思いを馳せ、新たな気付きを得る。
小泉「現代アメリカ文学の中でもトニ・モリスンの作品を研究しています。アフリカ系の彼女の作品を魔術的リアリズム(非現実を『現実』の中に取り入れて描く表現技法)の観点から研究してきましたが、最近は世界文学の枠組みの中で研究しています。また、マイノリティや『周縁』といった領域の中でも特に『弱者』である子どものための文学にも関心があります。自分とは異なる立場や境遇の人々の生き方、考え方、そして心に触れられることが、研究の魅力です。登場人物への共感や自分との違いに思いを巡らせていると、思いもよらない発見や新たな感情が生まれてきます。」
小泉先生が今の研究に取り組むきっかけとなったのは、アメリカに留学したときのこと。さまざまな国の人との出会いの中で、日本人としてマイノリティの立場について考えるようになったことが始まりです。
小泉「得られるものの多かった留学ですが、学習についていくのはとても大変でした。文学の授業で一週間に何冊もの作品を読む必要があったのですが、なかなか進まず、部屋で一人泣きながら読んでいたことを今でも覚えています。多くの大切な出会いもありました。恩師が開いてくれる『桜の会』は私の中の大切な行事です。人生や研究活動の節目を仲間と一緒に祝い、励まし合ってきました。」