Interview #04

他者の生き方、考え方を理解するきっかけとなるマイノリティの文学。

文学部 英語英米文学科

小泉 泉准教授

アメリカ留学での学びが マイノリティの視点で考える きっかけを作ってくれた。

自分と違う生き方、境遇の人に
思いを馳せ、新たな気付きを得る。

小泉「現代アメリカ文学の中でもトニ・モリスンの作品を研究しています。アフリカ系の彼女の作品を魔術的リアリズム(非現実を『現実』の中に取り入れて描く表現技法)の観点から研究してきましたが、最近は世界文学の枠組みの中で研究しています。また、マイノリティや『周縁』といった領域の中でも特に『弱者』である子どものための文学にも関心があります。自分とは異なる立場や境遇の人々の生き方、考え方、そして心に触れられることが、研究の魅力です。登場人物への共感や自分との違いに思いを巡らせていると、思いもよらない発見や新たな感情が生まれてきます。」

小泉先生が今の研究に取り組むきっかけとなったのは、アメリカに留学したときのこと。さまざまな国の人との出会いの中で、日本人としてマイノリティの立場について考えるようになったことが始まりです。

小泉「得られるものの多かった留学ですが、学習についていくのはとても大変でした。文学の授業で一週間に何冊もの作品を読む必要があったのですが、なかなか進まず、部屋で一人泣きながら読んでいたことを今でも覚えています。多くの大切な出会いもありました。恩師が開いてくれる『桜の会』は私の中の大切な行事です。人生や研究活動の節目を仲間と一緒に祝い、励まし合ってきました。」

他国の文学作品を研究することで 新たな世界を知り 新たなものの見方が得られる。

トニ・モリスン研究を進めた先に
小泉先生が見ているものとは。

アメリカでの出会いや経験を研究の糧とされている小泉先生は今後の研究についてどのように考えておられるのでしょうか。

小泉「トニ・モリスンの作品を引き続き研究していきたいと思います。児童向け作品も含め、彼女が遺した作品を新たな視点で見直すことで新たな収穫が得られることを期待しています。また、これまで研究してきた魔術的リアリズムについても更なる研究を行い、世界文学の枠組みの中でどのように広がっていったか、各国で魔術的リアリズムがどのような特徴を持つようになったかを比較しながら、現代におけるこの手法の意義を追求していきたいと思っています。」

文学研究を通じて、自分と異なる境遇の「他者」の存在に思いを馳せる小泉先生。最後に高校生へメッセージをいただきました。

小泉「外国の文学は皆さんを新たな世界に連れて行ってくれます。その世界の人々の生き方は自分とは違うかもしれませんが、その『違い』を知ることは大きな学びにつながります。例えばカナダの作家モンゴメリの『赤毛のアン』。彼女はどのように赤毛というコンプレックスを克服したのでしょうか。アンの想像力は人生をどのように好転させ、周囲の人々にどのような影響を与えたのでしょうか。『赤毛のアン』の他にも世界には様々な作品があります。翻訳は皆さんが新たな世界と出会う手助けをしてくれます。様々な文学作品に触れることは、皆さんの心を今まで以上に豊かにしてくれるでしょう。」

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