Interview #12

人はなぜ踊るのか?娯楽にとどまらないダンスの存在意義を見つめる。

文学部コミュニケーション学科

高橋 京子教授

人間の生活に深くかかわる踊り。 秘められた力と魅力を 五感で感じる研究。

踊りが持つ力を
身をもって体感。

高橋「病気治癒祈願や健康にかかわる舞踊の研究をしています。研究のきっかけは大学生の時に小児科病棟の子どもたちの姿を見たことがきっかけでした。ある時、毎日過酷な治療を行っている子が教育番組のダンスを見て、一緒に踊りだしたのです。毎日大変な状況を生きている子が楽しそうに踊る様子に、その子の母親も驚いておられました。つらい状況に置かれていても踊ることは人間にとって癒しになるのだと実感した瞬間です。」

高橋先生の研究対象は、心理療法としてのダンスセラピーではなく、日本人にとって身近なところに治癒の要素を持つダンスです。鹿児島県にある天然痘を治すための『疱瘡踊り』を発見し、研究するようになりました。

高橋「現地に足を運び、実際に見聞きして五感を通して様々なことを吸収します。こうして得られる生きた経験は表面上の情報にとどまらず、核心に触れられるように感じられます。表現された瞬間に消えていく生の舞踊を見たときに、興奮で鳥肌が立つ体験は他に代えがたいですね。」

世界の踊りが持つ共通性を追って 各地の踊りを研究したい。 ダンスへの情熱は尽きない。

踊りに託された機能は
世界共通の願いだった。

高橋「鹿児島の疱瘡踊りの研究を終えた後、インドにも天然痘治癒のための踊りがあると知り、研究対象を移しました。それとは別に西アフリカのナイジェリアにも同様の舞踊があり、更にはアフリカから奴隷としてブラジルへ連れて行かれた人々の中で受け継がれた舞踊もあります。このような天然痘を直す舞踊というものは世界中に存在しているかもしれません。ここ数年はコロナ禍で海外渡航がかないませんでしたが、将来は天然痘を直す舞踊を追って世界一周をしてみたいです。そして『人はなぜ踊るのか?』という究極の問いに答えを見つけられたらうれしいです。」

ダンス=娯楽とイメージからか、研究テーマを他の人に伝えると「ダンスが研究になるの?」と驚かれたこともあったそうです。高橋先生曰く、人類は昔から様々な想いをダンスに託しており、娯楽以外に多くの機能があるとのこと。ダンス愛に溢れる先生から研究に大事な姿勢について伺いました。

高橋「私は幼少期からクラシックバレエ一筋で、バレリーナにはなりませんでしたが自分の大好きな舞踊をテーマとして研究者人生を楽しんでいます。皆さんも『好き』を追求してみてください。小さなことでも構いません。思いがけない出会いが待っていますよ。」

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