Interview #01

フィリピンを発つ人々の外国での暮らしに着目。リアルな姿を追う。

文学部コミュニケーション学科

小ヶ谷 千穂教授

国境を越える人々に密着。 フィールドワークを通じて 仕事、暮らしの実態に迫る。

アジア域内での移民問題に興味を持ち
フィリピンから移動する人びとを研究する。

小ヶ谷「国境を越える人の移動とジェンダーの関係について、フィリピンからの移民・海外出稼ぎ労働者とその家族を対象に研究を行っています。働く地域も職業も様々な女性とその家族の暮らしのリアルな姿をフィールドワークやライフストーリー・インタビューを通して分析してきました。」

高校時代に行った初めての海外が東欧だった小ヶ谷先生は、学生時代はヨーロッパの民族問題に関心があり、EU統合やヨーロッパの民族問題を学ぶうちに、アジア域内での移民問題やジェンダーと国際移動の関係性に興味を持つように。「指導教官が知らないことを研究したい」というチャレンジ精神からフィリピン人の移動について研究を始めました。

小ヶ谷「ローマでフィリピン人介護労働者の調査をしていた時、イタリア人高齢者とフィリピン人介護労働者とが、一緒に歌を歌い、ワインを飲んでいる場面を目の当たりにしました。複雑な関係の中で国境を越えて温かい時間を過ごしている様子はとても印象的です。また、20年近くお世話になっているマニラの母親のような女性に研究成果をまとめた本を渡すと『千穂が本を出した!』と近所の色々な人に自慢してくれました。こうした方々の存在によって私の研究が形作られているのだと改めて実感しました。」

グローバルな人の移動が 社会にどのように作用するのか。 人や組織の繋がりから読み解く。

人と人が関わることで生まれる関係性が
社会をよりよくするカギとなる。

国境を越える移動もジェンダーも、研究課題は尽きません。これまで小ヶ谷先生は海外で働く女性やその家族の生活を研究していましたが、現在は歴史的視点に研究の軸を移しつつあり、JFC(日比国際児)を支援する組織に関わる人たちのライフストーリーを集めています。人々の想いや行動から生まれる関係の成り立ちを紐解いていく作業に研究の面白さを感じておられます。

小ヶ谷「日本に長期間住んでいるフィリピン出身者も増えていますが、日本社会はどのように移り変わっていくのか考え続けたいですね。『既に多様性のある日本社会』と言えばよいでしょうか、日本におけるジェンダーとエスニシティの多様な現実についてもっと知ってもらえるように努力していきたいです。研究とは知られていないことに光を当てることだと思います。思いがけない出会いが一生付き合う研究テーマに導いてくれるかもしれません。柔軟な発想としなやかな行動力を学生生活の中で身に付けてほしいです。」

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