音楽文化とその社会背景への関心が
研究のきっかけに。
様々な人種・民族・文化的背景を持つ人々が共存するラテンアメリカの国々。近年その多様性をポジティブなものと捉えて国内外にアピールしようという動きが盛んになっています。遠藤先生は、その「多文化主義」の潮流がラテンアメリカ諸国の政治や社会や文化にもたらす影響について研究されています。なかでも強い関心を持っているのが、各国の人種・民族グループの人々が自分たちの存在をアピールするために実践している社会運動です。
遠藤「人種・民族の問題にかかわる地域研究に興味を持ったきっかけは、高校時代に出会ったブルースという音楽です。ブルースを育んだ米国南部の『黒人』の歴史を学び始め、やがて世界各地の音楽文化とその社会背景について研究したいと考えるようになりました。学生時代から様々な本や音楽に触れてきましたが、すぐにはその価値を理解できないことが多かったです。私の学生時代にはまだ一つひとつの文献や音源を入手するのに時間もお金もかかったので、『好みでない』と簡単に手放す気になれず、なぜ自分には『わからない』のだろうと考えながら、何度も繰り返し読んだり聴いたりしていました。表面を見て即断するのでなく、物事の背景を理解して複眼的に思考する姿勢は、こうして『わからない』ものに向き合った経験を通じて培われたように思います。」