人の感情表現を「声」のデータから分析し、豊かなコミュニケーション能力を育む
音声学は、人が発する音声を正確に記録・分析することでコミュニケーションに役立てていく学問です。「発音を記号化する」という方法は言語研究の分野では古くから行われていますが、客観性という面ではまだまだ発展途上です。例えば、“母音体系”の形状分析にしても、一般的には、長時間にわたる音声のIPA(国際音声字母)表記トレーニングを受けたのち、「イ・エ・ア・オ・ウ」の母音の調音点(発音するときに舌が盛り上がっている箇所)を、分析者の聞き取り判断により、提示・分析するのですが、私のゼミでは、声紋分析により客観的周波数値で“母音体系”形状を“F1-F2図”と呼ばれるレントゲンやMRIにより確認される調音点に対応する図により明らかにし、場面や感情による調音点の微細な変化まで分析しています。
このような音声研究方法は、日本語の効果的なコミュニケーションはもちろん、方言の地理的・社会的メカニズムの解明にも役立つはずです。
私のゼミで学んでいる学生の研究は、日本を代表する有名な声優の方々を対象に、キャラクターを演じているときの声と平常時の声の両方のデータから母音体系を比較・分析する画期的な研究です。声優をはじめとする表現者の方がどのように感情を表現しているのかを「声」から明らかにすることで、豊かなコミュケーション能力を習得できるはずです。
※本学では、最高水準の声紋分析環境(Sugi SpeechAnalyzer<60ライセンス>),音声工房<60ライセンス>Praat,Wavesurfer,Audacity<各ソフト学内全PC>と、統計解析環境(SPSS ∧ Amos 100ライセンス)を整え、文科系学生が無理なく学習・研究できる(数式を用いない)確立された指導方法により、音声言語の教育・研究を展開し、数多くの成果を発信しています。